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まぐれ

表紙

ナシーム・ニコラス・タレブ『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』(ダイヤモンド社)

■ 全米が震撼したベストセラー、待望の日本語版!
 刊行されてからすでに1年近く経過しているが、前々から気になっていたタイトルだったので、遅ればせながら取り寄せて読んでみた。以下、その感想。

 筆者のタレブ氏は、裏表紙の見返しにある「筆者紹介」によると、プロのトレーダーとして20年以上のキャリアを持つ数理系トレーダーであり、不確実性科学を専門とする大学教授でもある。
 したがって、分析投資を数学的に否定した学術論文だと思われるかもしれないが、あくまでも本書はタレブ氏個人の「エッセイ」にすぎないので、過度の期待をすると肩すかしを食うかもしれない。
 本の内容を要約すると、次のような感じになる。

 一般的に、科学的思考に慣れてない普通の人々、特に文系の人たちは、ただの偶然にすぎない一連の出来事に対して必然性を感じてしまう傾向がある。ただのノイズであるものに対して、何か特別な意味を見い出したと錯覚してしまうのだ。
 私は長年にわたって携わってきた投資の世界において、そのような人物たちをたくさん見てきた。たまたま運が良くて、たまたま成功しただけなのに、何か実力があると勘違いをしている愚かな人間たちを。そんな奴らは、いわば表か裏かの1/2のコイントス勝負で勝ち抜いてきただけだ。勝ち残ったのは偶然の産物であって、特に能力が高かったわけではない。
 そういった愚かな投資家たちは、私が「黒い白鳥」と呼ぶ稀な事象(つまりは暴落)によって、一瞬にしてすべてを失うことになる。いままで正しいと信じてきたセオリーがひっくり返ってしまい、うまく対応できないのだ。
 しかしながら、市場にはそんな稀な事象を逆手にとって儲ける上手いトレーダーもいる(それが私、タレブのことだ)。そういうトレーダーにとっては、不意の暴落は大きなボラティリティが期待できるチャンスだ。日々の小さな損は構わない。いかにしてチャンスに大きく儲けるかが問題なのだ。

 ここで私の主張を権威付けしておこう。登場するのは哲学・思想の大家カール・R・ポパーだ。ポパーは20世紀の科学哲学において大きな影響を与えた人物だ。彼の思想は主著『科学的発見の論理』によって展開されている。ポパーの考え方を一言で言うと「方法論的反証主義」(=「反」実証主義)という。
 ポパーが主張するには、理論のあり方は二つしかない。
 1.検証が行われ、適切な形で否定(ポパーは反証と呼ぶ)されて、間違っていることがすでにわかっている理論。
 2.まだ反証が成功していないので、間違っているかどうかはわからないけれど、間違っていることが証明される可能性のある理論。(本文161ページ)

 先ほどの「黒い白鳥」の例に置き換えると、白い白鳥を何羽観察しようが、この世に黒い白鳥がいないとは断言できない。観察する数を増やせば増やすほど命題の信頼性は上がるかもしれないが、たった1羽でも反例が見つかれば、瞬時にその命題は否定されてしまう。こうして、実証主義的な科学手法が依拠する帰納法は完全に否定されることになる。
 代わりにポパーが提唱する反証主義は、ある仮説が真の科学的言説であるかどうかは「反証可能性」にかかっているとする考え方だ。反証されない仮説は科学的な仮説とはいえないのだ。

 私はポパーの(現在では主流となっている)反証主義を行動規範にしているが、負け組投資家は19世紀のコント流の実証主義を信じている・・・・。

 このような内容が、経済学、統計学、哲学、古典文学、脳科学、などを引用しながら、14章の変奏曲のように語られるのである。


■ では、タレブさん、あなたのところには黒い白鳥は来るの? 来ないの?
 タレブ氏にとっての「黒い白鳥」問題とは、黒い白鳥が来ない世界、つまり他の投資家が信じている実証主義が成立してしまう世界のことだ。といっても、その世界は永遠に続かなくてもいい。タレブ氏が知っている(と思われる)暴落のポイントをすぎても暴落せずに、空売りの逆張りをしているタレブ氏が真綿で首を締められて死ぬまでの間でいいのだ。宇宙が存在してきた時間と比較するとほんの一瞬の間だけ、コインの表が出続ければいいのである。

 (しかし、この本を読了した読者ならば、賢明なタレブ氏がこんな無惨な死を迎えることはあり得ないと知っている。あらかじめストップ・ロスを設定しているタレブ氏ならば、自分の間違いに気づいてさっさと損切りしているだろう。)

 長い間、成功したトレーダーとして、数多くの勘違い傲慢野郎が木っ端みじんに砕け散ってきたのを、冷ややかな目で見てきた筆者。成功した人間なんて、所詮は運が良かっただけなんだよ、とバッサリ切り捨てる。だが、その冷徹な視線は、ブーメラン式に自分にも跳ね返ってくるのである。
 あなたが投資で成功したのも、学者として成功したのも、本がベストセラーになったのも、実は運が良かっただけなんじゃないの?
 こうした意地悪な質問に対してタレブ氏は、自分もランダムに踊らされる人間のひとりだと、ところどころ表現を変えながらしっかりとエクスキューズしているのである。実に抜け目のないお方である。人をイライラさせることに天才的な才能があったポパーと、彼を尊敬するタレブ氏はよく似ている。(※『ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い10分間の大激論の謎』(筑摩書房)を参照)

 この本を読んで役に立つかと言えば、はっきり言って全く役に立たない。少なくとも投資には何の役にも立たない。この本を読んで、「よし、これから投資を始めよう」などと考える人間はまずいないだろう。
 だいたい、成功した投資家の本など役に立たないのは周知の事実である。市場の歪みに気づいて、それを利用して儲けている人間がいるとすれば、その手法をわざわざ他人に披露するはずがなく、当たり障りのないことを言うのが関の山である。世界No.1投資家のウォーレン・バフェットの本でさえ、読み取れるのは「僕はコーラが大好きだ」ぐらいなのだ。

 否定的な意見を勢いに任せて書き綴ってしまったが、本書には大いに楽しませてもらった。博覧強記のタレブ氏が、手を替え品を替え自分の主張を伝えようとするある種の「読み物」としては相当の面白さがあり、いまでも売れ続けているのは納得である。
 何か役に立つかと言えば、全く役に立たない。しかし、読む価値があるかと言えば、大きくうなづくしかない。そんな不思議な本である。

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