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ピカソになりきった男

表紙

ギィ・リブ『ピカソになりきった男』(キノブックス)

■ その朝、俺はピカソだった
 『週刊文春』の読書日記コーナーで、作家の池澤夏樹氏が紹介していた一冊。池澤氏は知人から今年いちばん面白かった本だと勧められたそうだが、確かに強く惹き付けられる内容だった。
 著者のギィ・リブは30年にわたり有名画家の贋作を制作していたフランス人で、本書は自身の数奇な半生を綴った自伝である。彼は贋作を売った罪で2005年に逮捕され、2010年に禁固4年、執行猶予3年の身となった。この事件は以前インターネットのニュースサイトで見た記憶がある。

 贋作というと、普通は他人の絵をそっくりに模写したものか、一部を改変したものだと思うかもしれないが、ギィが描いていた絵は巨匠の手法を真似た「~風」絵画である。
 たとえば、ピカソがある場所で10枚の絵を描いたという事実があるなら、ピカソが11枚目に描いたであろう絵を想像して描くのである。出来上がった絵画は、ピカソの絵によく似たギィのオリジナル作品である。

 ギィのとてつもない才能とは、ピカソ、シャガール、マティス、藤田嗣治など、何人もの画家の絵を描き分けることができることだ。贋作仲間の依頼に応じて、大量の偽絵画を生産していた手際の良さには惚れ惚れするほどである。画材も年代ものに拘り、画材店を探し回っている。一流の贋作師とは努力を欠かさないものだなと変な意味で感心してしまった。

 彼は正式な美術の教育を受けていない。ほぼ独学で巨匠のレベルに到達しているというのだから驚きである。ピエール・ルメートルのミステリー小説『悲しみのイレーヌ』のなかに、「フランス人の半分は作家のなりそこないで、残りの半分は画家のなりそこない」というユニークな表現があったが、フランス人のDNAには芸術家の血が流れているのだろう。

 ギィの天賦の才を見抜いて贋作を描くように促した画商たちとの交流や、贋作を売りさばいた金で放蕩三昧の日々を過ごした話は、そのまま映画やドラマの脚本になりそうな面白さである。
 彼が描いた絵はインターネットで数点確認できる。「贋作」という先入観を持って見ると、やはり本物には見えない。しかし鑑定書や証明書付きで「本物ですよ」と画商から見せられたら、はたして人は贋作だと看破することができるだろうか?

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建築家 安藤忠雄

表紙

安藤忠雄『建築家 安藤忠雄』(新潮社)

■ 闘う建築家・安藤忠雄の強烈なメッセージ
 恐い眼である。表紙写真の鋭い眼光からは、自信と情熱、そして不屈の闘志が伝わってくる。アラーキーこと写真家の荒木経惟氏が撮った渾身の一枚は、安藤忠雄の挑戦的、挑発的、野心的な内面を如実に写し出している。書店で平積みにされていたら、迫力に負けて手に取ってしまうしかない。

 本書は、安藤氏の幼少時代から建築家を志すまでの経緯、そして世界的な建築家となった現在までを丹念に追った初の自伝である。他の著書には『建築を語る』や『連戦連敗』などがあるが、いずれも東京大学出版会から刊行されたもので、ややアカデミックな嫌いがあった。今回の著書は、作品集というよりも、彼自身のメッセージに重点が置かれた啓蒙書的な内容になっている。当然、上に挙げた二冊よりも平易で読みやすい。

 建築家の安藤忠雄氏は、元プロボクサーであるという事実もさることながら、「独学」で設計事務所を立ち上げたというありえない経歴を持つ。日本で建築士になるには、大学の建築科を出て設計事務所で働きながら建築士の試験に合格するか、又は建設現場で実務経験を積み建築士の試験に合格するかどちらかしかない。彼はそのプロセスを経ずに、デザイナーのような仕事を皮切りに設計の仕事に足を染め、28歳で大阪に自分の設計事務所を開いたのだ。異端というか常識外れでしかない人物である。

 安藤氏の独創的な性格は、その実質的なデビュー作からすでにうかがうことができる。大阪市住吉区にある通称〈住吉の長屋〉は、三軒長屋の中央、間口2間×奥行き8間のコンクリート打ち放しの箱の家である。入り口以外には窓がなく、その代わりに三等分された真ん中に「屋根のない」中庭が設けられている。雨の日に寝室から食堂やトイレに傘を差して行かなければならない。断熱を施していないので冬は寒い。おおよそ理想の住宅からはほど遠く、多くの建築家からは批判的な意見が出た。しかし、彼はそれに答えて言う。
 「現実に住まい手に厳しい生活を強いている以上、建築家のエゴだと言われるのは仕方がない部分もあるだろう。だが、機能も考えず芸術作品のように好き勝手につくったのだろうという批評は、的外れだ。この家は、決してそこで営まれる生活を無視して出来たものではない。逆に、生活とは何かということを自分なりに徹底的に考え、突き詰めた結果だったのである。」(本文67ページ)
 つまり、中庭という自然の空間があることで外の世界と一体化し、そこから入る空気や光線によって狭いながらも小宇宙を感じることができるような、豊かな住まいを目指したのである。

 芸術家気質の建築家には、多少なりとも注文よりも自分の理想を優先する部分があるが、安藤氏のコンクリート打ち放しに対するこだわりは普通ではない。場合によってはクライアントの要求を曲げてでも、コンクリート造りに固執する理由はいったい何なのか。
 それはコンクリートの滑らかな素材感と、コンクリートが造り出すことのできる多様な空間を求めてのことである。イメージするものは「人々の心に、ただ空間体験だけが残っていくような、簡素で力強い空間」(本文155ページ)。そしてその巧みな視線は、新しい時代のコンクリートの表現までも視野に入れている。
 ただ、コンクリートは扱いが難しい。その時の気候条件などによって、仕上がりは全く別の顔を見せるからだ。そのためコンクリートの成否は、職人との確かな人間関係にかかっていると言う。

 安藤氏は常に自然と対峙する生活の仕方を提示する。彼は闘う建築家であるが、居住者に対してもまた闘うことを要求する。彼の半ば理不尽な提案に尻込みする人は去っていき、面白いと興味を持ってくれた人だけが彼の人脈となった。そういう自由な生き方を安藤氏は選択してきたのだ。
 だが、彼はつくればそれで終わりの無責任な建築家ではない。後のメンテナンスやアフターフォローはきっちりとこなす。ときには敬遠されるような厳しいことも言うが、それでも彼が今日まで支持されてきたのは、仕事に対するひたむきな姿勢という、最も基本的な部分なのかもしれない。

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