
・機種 | ファミコンディスクシステム |
・メーカー | 任天堂 |
・ジャンル | アドベンチャー |
・発売日 | 1986年2月21日 |
・価格 | 2,600円 |
■ ディスクシステム初のソフトにして頂点 ゼルダ伝説の始まり 『スーパーマリオブラザーズ』を生んだ任天堂の宮本茂氏が中心となり、ディスクシステム第1弾のゲームとして開発された『ゼルダの伝説』。画面切り替え方式を採用したアクションアドベンチャーゲームです。ディスクシステムの(当時としては)大容量を生かした広大なマップと凝ったダンジョンの数々で、他の凡ゲームを完全にスケールで圧倒していました。カセットのソフトではまだ実現されていなかったセーブ機能も搭載しており、新しい時代のゲームを予感させました。
これ以後、ディスクシステムという機器は、1992年12月に徳間書店が出した『じゃんけんディスク城』(書き換え専用)まで約7年間続いていきますが、結局『ゼルダの伝説』を超えるゲームが現れることはありませんでした。
「最初からこんなもの凄いゲームが出るなら、次々ともっと面白いゲームが発売されるだろう」というディスクシステムユーザーの期待をある意味裏切ってしまったわけです。社運を賭けた新商品のディスクシステムの実力を知らしめるために、このゲームに並々ならぬ努力が注がれたことが想像できます。
私がディスクシステムを買ったのは、『スーパーマリオブラザーズ2』が発売された何ヶ月か後のことで、おそらく86年の年末ぐらいだったと思います。これがないと『スーパーマリオ2』ができない、という極めて自然発生的な欲求からでした。
任天堂という会社は(今もあまり変わっていませんが)ゲームの周辺機器をいろいろと出しては、後々のフォローをしてくれない(笑)、つまり2つ、3つ対応ゲームを与えて「はい、おしまいです」ということが多いです。別に批判しているわけではありません。新しい遊び方を常に模索している会社という認識です。「ファミコンロボット」や「ファミリーベーシック」などもいつの間にか無かったことになっていましたから、このディスクシステムもいつまで持つのかなと、うっすらとした警戒感がありました。
それで様子見をしていた中、『スーパーマリオ2』、『メトロイド』、『悪魔城ドラキュラ』と順調に良質なソフトが供給されていたので、「うん、どうやらこれは本気だな」と思い、ディスクシステムを購入したわけです。
『ゼルダの伝説』については、実際にプレイするよりも、友達の家で人がプレイしているのを見たのが先でした。持ち主だった彼は、「裏ゼルダ」を解いて私にエンディングを見せてくれましたね。彼の誇らしげな気持ちはよく伝わりましたよ。最後のガノンがいるレベル9ダンジョンは複雑な仕掛けが多くて、こんなに難しいゲームをよくクリアしたなぁと感心しましたから。
■ ゲーム史に燦然と輝く、荘厳なオープニングの鐘の音 まず度肝を抜かれたのが、まるで映画のようなオープニング画面でした(上画像参照)。有名な『ゼルダの伝説』のテーマ曲が流れるなか、鐘の音が4回鳴り響き、暗転してストーリー紹介~アイテム紹介へと移っていきます。
ファミコン史上、いやゲーム史上最も優れたオープニングかもしれません。誰でもゲームを開始するときは、まず絶対に一度は通して見たはずです。まだ見ぬアイテム群に心を奪われ、冒険心を奮い起こしたのは私だけではないでしょう。
ゲームをスタートさせると、リンクの目の前にあるのは、洞窟の入り口と、北、東、西への3本の分かれ道。自分の好きな方角へ進むことができます。いかにも『ゼルダ』らしいと言いますか、自由度が非常に高いこのゲームを象徴しているスタート画面です。
まずは洞窟にいる老人からソードを貰いましょう。武器がないとゲームが始まりません。「ヒトリデハキケンジャ コレヲ サズケヨウ」。コレハコレハ、アリガタク チョウダイシマス。リンクは何も持たずに何をしにここに来たのか、と軽くツッコミを入れてからゲーム開始です。せめて果物ナイフくらいは携帯しましょうよ。
フィールドは横16画面×縦8画面(全128画面)の横長マップです。中央に大きな湖があり、上部は山岳地帯になっています。リンクのライフ(体力)が減ったときは、マップ上に2箇所ある「妖精の泉」を訪ねると、妖精がライフを全回復してくれます。
なお、このゲームでは経験値によるレベルアップはありません。ライフを含めて、リンクの能力はすべてアイテムを取得することでパワーアップします。難易度に直接関係してくるアイテムはソードとリングですね。特にダメージを4分の1に軽減してくれる「レッドリング」は、最終ダンジョン攻略に欠かせないアイテムだと思います。
■ 裏ゼルダ・・・だと・・・? 表があるなら裏がある 発売されてからしばらくして、『ゼルダの伝説』にはクリアした後に、それまでとは違う「裏ゼルダ」が遊べるらしいという噂話を耳にしました。雑誌の記事からか、それとも友達からの情報なのかはよく覚えていません。
「裏ゼルダ」といってもただ単純に敵の強さがアップするといった次元の話ではなく、アイテムがある隠し洞窟の位置も、ダンジョンの構造も大きく異なっているというのです。これには本当に驚愕しましたね。一挙にゲームの規模が2倍になったわけですから、信じられない思いでした。
しかし同時に、このゲームはちゃんと自力でクリアできるのかと、不安になったことも事実です。私は友達がプレイしているのを見ていたのでダンジョンの位置などは知っていたのですが、もし予備知識がなかったら、自分独りですべてのダンジョンの入り口を見つけ出せたか自信がありません。特に裏ゼルダのダンジョンは巧妙に隠されていましたからね。おそらく一ブロックずつ捜索する前に、攻略本か何かに助けを求めた可能性が高いです。
昔のゲームをプレイして「ここの謎解きは絶対に無理だから、クソゲーだろ」と非難される方がいますが、意外とファミコン世代の子供たちはみんな分かっていたんですね。
何日も同じゲームをプレイしていて偶然に発見して、それをゲーム仲間との会話で教え合ったりと、インターネットのような便利な機械はありませんでしたが、ゲームの攻略情報はある程度共有されていたのです。
そういった過去を知っている立場からすれば、些細な謎解きでレトロゲームを糾弾されると、とても困惑しますね。「えっ?小学生の私たちはみんな知ってましたけど」と返答するしかないんですよ。
ディスクシステムが後年廃れていったのは、ロムカセットが改良されセーブが可能になり、容量もディスクシステムを凌ぐようになったためでした。ディスクはロード時間があるというデメリットだけが残り、徐々にゲーム市場からフェードアウトしていくことになります。
『ゼルダの伝説』は要望が多かったのか、1994年の2月にロムカセット版で再販されています。音がディスク版よりも貧弱なようですが、これはまぁ諦めるしかないでしょう。
ディスクからカセットで再販されたゲームには他に、コナミのいわゆる「ディスク三部作」があります。『悪魔城ドラキュラ』、『バイオミラクル ぼくってウパ』、『もえろツインビー シナモン博士を救え!』の3作品ですね。
カセット版の『ゼルダの伝説』はそうでもないのですが、上記の3作品は、現在では中古市場でプレミア価格になっています。どれも定価3,900円だったのが、裸カセットでもそれ以上の値段が付いていますね。もし安く売ってあるお店を偶然に見つけたら、迷わず買うのがいいと思います(笑)。
